資金繰り表
2023.12.12

手形貸付とは?仕組みやメリット・デメリット、証書貸付との違いなどを解説! wave

手形貸付とは、約束手形を担保にしてお金を借りる資金調達方法で、主につなぎ融資や短期運転資金などに利用されます。手形融資は審査や手続きがスピーディといったメリットがある反面、長期の融資が受けられないなどのデメリットもあります。この記事では、手形貸付の概要やメリット・デメリット、申し込み方法、証書貸付との違いなどについて解説します。

  1. 手形貸付とは?
  2. 手形貸付が活用されるシーンとは?
  3. 手形貸付のメリットとは?
  4. 手形貸付のデメリットはある?
  5. 手形貸付と証書貸付の違いは何?
  6. 手形貸付でお金を借りる際の手順
  7. 手形貸付の利息の目安はいくら? 
  8. 2026年までに”約束手形”は廃止する方針
  9. まとめ

手形貸付とは?

手形貸付とは、借主が金融機関宛の約束手形を振り出し、その約束手形を担保にお金を借りる方法です。なお、約束手形とは、期日までに定められた金額の支払いを約束する、有価証券の一種のことをいいます。

「約束手形を振り出す」とは約束手形を発行することで、代金を支払う側を「振出人」、受け取る側を「受取人」といいます。振出人が約束手形で代金を引き渡すと、期日に振出人の当座預金から代金が引き落とされます。

当座預金とは、手形や小切手の支払に使われる業務用の決済口座のことです。手形貸付を利用するときは、当座預金の開設が必要です。  

手形貸付の仕組みについて

手形貸付では、手形金額に相応する額から利息を引いた金額が、1年以内の短期融資として貸し付けられます。手形貸付で融資を受けた借主は、手形の支払期日に借入金を一括返済しなければなりません。

ただし、手形の支払期日より前に一部を返済する手形の内入れも可能です。取引先から代金が一部入金されたような場合は、手形の内入れをすることで利息を減らすことができます。

手形貸付が活用されるシーンとは?

お金とお家の画像

手形貸付は短期融資のため、主につなぎ融資や短期運転資金として活用されます。ここでは、つなぎ融資が活用されるシーンについてそれぞれ解説します。

つなぎ融資

つなぎ融資とは、住宅ローンの融資実行前に必要な資金を、一時的に立て替えてもらうための融資のことです。手形貸付は、住宅ローンのつなぎ融資としても活用されています。

家を購入する場合、一般的に住宅ローンを利用しますが、住宅ローンは完成した住宅を引き渡されなければ融資が実行されません。したがって注文住宅のように建物完成前に着工金や上棟金が必要な場合や、新築住宅を建てる前に土地を購入するときの購入代金などが必要なときには、住宅ローン以外の方法で資金を調達する必要があります。このような場合に利用されるのが、手形貸付の仕組みを利用したつなぎ融資です。

つなぎ融資は、建物が完成したあと住宅ローンの融資金で精算していくことになります。なお、住宅ローンは、証書貸付の一種となります。

短期運転資金

手形貸付は、主に建設業などで短期運転資金を調達したいときに利用されます。

建設工事の代金は完成後に支払われますが、建設会社は工事に必要な資材の仕入れや、重機のリース代や人件費などをその間も負担しなければなりません。このような場合に手形貸付で融資を受けて経費を支払い、工事代金が入金された段階で一括返済をするといった活用方法があります。

短コロ融資

短コロとは「短期転がし」のことで、短コロ融資とは、手形貸付の書き換えを継続する方法です。また、手形貸付の書き換えとは、振出人が支払期日を変更した新しい手形を振り出して、新しい手形として渡すことをいいます。

メーカーや商社のように、つねに商品の在庫を抱えているような業種は、入金のたびに返済をしていると仕入資金が不足してしまう可能性があります。短コロを利用することで、長期間融資を受けることができるため、疑似的な自己資金となり資金繰りを安定させる効果があるのです。

金融庁は金融検査マニュアル別冊【中小企業融資編】のなかで、「短コロは妥当な融資形態の1つ」としています。  

※出典:金融庁 金融検査マニュアル別冊【中小企業融資編】 P.63

手形貸付のメリットとは?

約束手形

手形貸付は約束手形という担保があることや、金融機関の事務手続きが少ないなどの理由から、スピーディに資金調達ができるというメリットがあります。ここでは、手形貸付のメリットについて解説します。

資金の調達が速い

手形貸付は、証書貸付に比べて必要書類や金融機関の事務手続きが少ない傾向があります。そのため審査に通過すれば、スピーディに資金調達ができます。

印紙税が抑えられる

手形貸付で使用される約束手形は印紙税の対象となりますが、証書貸付の借用書(金銭消費貸借契約書)の印紙税よりも安くなっています。また、約束手形は借用書のように借手と貸手の2通を作成する必要がないため、用意する印紙は1枚で済みます。

例えば証書貸付で1,000万円を借りる場合の印紙税は1万円で、2通分必要なので2万円がかかりますが、約束手形の場合は2,000円で済み、2通分用意する必要がありません。

審査が速い

手形貸付は約束手形を担保としていることから、他の融資と比べて審査項目が少なく、審査が速い傾向があります。場合によっては即日融資も可能です。

また、初回の利用で金融機関から信用を得ていれば、2回目以降はさらに簡易な手続きで融資を受けられる場合があります。

資金繰りに利用しやすい

手形貸付は短期融資のため、従業員の賞与や納税資金といった季節的な資金需要に向いています。取引先から入金があるまでの間少しだけ利用したいといった資金繰りにも利用しやすい資金調達方法です。

低金利で融資が受けられる可能性がある

約束手形という担保があり、融資期間が短期であることから、手形貸付は金融機関にとっては比較的回収リスクが低い融資です。そのため、比較的低金利で融資が受けられる可能性があります。

手形貸付のデメリットはある?

会社の写真

手形貸付にはデメリットもあります。ここでは、手形貸付のデメリットや注意点について解説します。

長期的な融資が受けられない

手形貸付は、借入期間が原則1年以内の短期融資です。そのため、設備投資のような高額かつ借入期間が長期にわたる資金調達には向いていません。ただし、継続的に手形貸付を書き換える「短コロ」で、継続的に融資を受けることは可能です。

高い信用度が必要

手形貸付は、約束手形に記載された期日までに全額返済しなければなりません。しかし、財務内容などを審査した結果、短期間での返済能力がないと判断された場合は、融資を受けられない可能性があります。

一時的に財務状況などが悪い時期に申し込むと、審査に通りにくい場合があります。そのため、申し込みのタイミングにも注意が必要です。

決済ができなかったときのリスクが大きい

約束手形に記載された期日までに、当座預金に借入金全額を入金していない場合は、不渡りとなります。不渡りを出すと金融機関が手形交換所に不渡り届けを提出し、不渡り届けを受け取った手形交換所は、その内容を「不渡報告」に記載して、加盟銀行に通知します。

不渡りが一回目であればこれ以上の処分はありませんが、信用力が大きく低下することから、新たに融資を受けることが極めて難しくなります。

また、すでに利用している融資があると、それを引き揚げようとする金融機関が現れ、経営が困難になる可能があります。また、不渡りを出したことを取引先に知られた場合、取引の縮小や中止に至る可能性があります。

さらに、一度目の不渡りから6カ月以内に再度不渡りを出すと銀行取引停止となり、当座預金口座を利用した取引が2年間停止になります。短期的にお金を借りることも難しくなるため、一般的に事実上の倒産とみなされます。    

手形貸付と証書貸付の違いは何?

資料を見る人たち

手形貸付と証書貸付は、主に用途・期間・返済方法・融資額などで違いがあります。また、手形貸付は融資を受けるときに、約束手形を差し出しますが、証書貸付では金融機関と金銭消費貸借契約書を交わしたうえで融資を受けます。契約書には金利や融資金額、返済期間、返済方法といった情報が記載されています。

証書貸付手形貸付
用途・事業の運転資金
・高額な設備投資
・決済資金
・つなぎ資金
期間主に1年超~数十年の場合もあり原則1年以内
返済方法分割期日までに一括返済
融資額高額な融資が受けられる高額な融資が受けられない可能性がある

証書貸付と手形貸付のいずれも融資金額の制限はありませんが、手形貸付は返済期間が1年以内なうえ一括で返済する必要があるため、少額の融資を受けたいときに利用します。

一方で高額な融資を受けて分割で返済していく場合は、証書貸付を利用するのが一般的です。

関連リンク:貸付とは? 用語の意味やローンの種類を詳しく解説

手形貸付でお金を借りる際の手順

窓口で手続きをする男性

手形貸付でお金を借りる主な手順には、金融機関選び、申し込み、審査、融資の4つの流れがあります。ここではそれぞれの手順について解説します。

金融機関を選ぶ

まず、手形貸付を利用する金融機関を選びます。手形貸付は期日までに全額を返済するという信用のもとに成り立っているため、信頼関係がまだ十分ではない金融機関では利用できない場合が多いでしょう。

審査の際は過去の取引履歴や、企業業績などの履歴を保管しています。手形貸付を利用するには、金融機関との信頼関係を築いておくことも大切です。

手形貸付の申し込みを行う

利用する金融機関が決まったら、手形貸付の申し込みを行います。必要な書類は金融機関によって異なりますが、主に次のような書類が必要です。

【申込時に必要な書類】

  • 金融機関所定の約束手形
  • 履歴事項全部証明書
  • 本人確認書類(代表者の運転免許証など)
  • 決算書(複数年分)
  • 資金繰り表や事業計画書
  • 当座照合表

多くの場合、申し込みは窓口で行いますが、オンラインでの手続きができる金融機関もあります。

審査を受ける

審査は、申し込み内容や提出した書類をもとに行われます。手形貸付の審査は、比較的スピーディに行われますが、ノンバンクの場合はさらに審査時間が早い傾向があります。

契約

返済期間や返済方法などの条件を確認して、問題がなければ契約を締結します。契約時には主に次のような書類が必要です。  

【契約時に必要な書類】

  • 申込時に提出した書類の原本
  • 実印
  • 印鑑登録証明書
  • 融資金額に応じた収入印紙

契約完了後は、期日までの利息を控除した金額が入金されます。

手形貸付の利息の目安はいくら? 

金利のブロック

手形貸付の金利は、振り出し元の企業の信用度や金融機関によっても異なりますが、3.0~20.0%と幅があります。
利息は次の計算式で計算をします。

利息=借入金額×金利÷365(※)×借入期間

【例】借入額500万円 金利10.0%で期日が3カ月後の場合
500万円×10.0%÷365×90日(3カ月)=約12万3,287円
融資金額:500万円-約12万3,287円=約487万円

(※)うるう年の場合は366日

2026年までに”約束手形”は廃止する方針

手形貸付は約束手形を担保として融資を受ける制度ですが、経済産業省は2026年までに約束手形を廃止する方針を発表しています。

約束手形は支払い期日が30~120日と長い傾向があります。これは、代金を支払う側の資金繰りはラクになりますが、商品やサービスを提供した側がなかなか代金を受け取れないという状況になることが問題視されているためです。

また、経済産業省が中心となって実施された「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会」では、利息や割引料も代金を受け取る側が負担している実態が報告されています。

今後、2026年までに約束手形を廃止し、代替手段としてインターネットバンキングや電子記録債権(でんさい)の活用を促す方針です。

約束手形を利用した借入は今後できなくなるため、無担保の借入も検討しましょう。例えばアコムは無担保で、審査最短20分、最短即日融資が可能です(※1)。

また、個人事業主を対象としたビジネスサポートカードローンもあります。 その他にもさまざまな借入方法があるため、約束手形廃止後はどのような手段で借入を行うか慎重に検討しましょう。  

(※1)お申込時間や審査によりご希望に添えない場合がございます。

まとめ

話し合う男性たち

手形貸付はスピーディに融資が受けられるため、つなぎ融資や短期運転資金を調達したいときに便利な方法です。ただし、長期的な融資が受けられない、不渡りを出したときのリスクが大きいといったデメリットもあります。

「短コロ」を活用することでも、継続的に融資を受けることができます。また、設備投資など融資額が高額で返済が長期になりがちな借入れについては、証書貸付のほうが良いケースもありますので、必要に応じて使い分けましょう。


執筆者:金子賢司

CFP 東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務めるなか、金融に興味を持ち、資産運用やローンなどの勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信中。

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