中期経営計画
財務担当役員メッセージ~資本コストや株価を意識した経営の推進~

財務健全性維持及び収益力強化を図り、安定的・継続的な株主配当を堅持することで持続的な企業価値向上を実現する
2025年9月
常務執行役員
森下 和喜
企業価値の現状認識と課題
当社の株主資本コストはCAPMや株式益利回りによる推計値に基づき、8.5%~9.5%程度と認識しています。2025年3月期のROEは、利息返還損失引当金への追加繰入れなどにより、株主資本コストを下回る5.0%となっております。PBRについても、0.92倍*と基準である1倍を下回っている状況にあります。PBRは、ROEと密接に関連しており、企業としてPBRが1倍を上回ることは最低限の水準であると認識しています。企業価値を向上させるために、ROEの向上と株主資本コストの抑制に取り組んでいかなければなりません。新中期経営計画では、ROE10%を目標に収益力の改善に取り組んでいくとともに適切な情報開示やサステナビリティ経営の高度化を図り、株主資本コストの抑制にも努めていく必要があると認識しています。
- *2025年3月末時点


企業価値向上への道筋

セグメント別ROAの適正化
収益力の向上は喫緊の課題であり、各セグメントにおけるROAを向上させる必要があります。例えば、ローン・クレジットカード事業のROAは営業利益ベースで営業債権残高に対して5%、 信用保証事業は信用保証残高に対して1.5%、海外金融事業は安定期においては10%程度を目安としております。
当社の主力事業であるローン・クレジットカード事業は、業容・業績に占める割合が大きいため、コスト効率を高めながら新規顧客の獲得と営業債権残高の伸長を図り、 利益率を高めなければなりません。例えば、一人のお客さまが1年後に保持する残高や得られる利息収入、2年目以降に継続して取引いただける割合とその収益などを長期的な視点で捉えることが重要です。そのうえで、適切な広告宣伝費を算出し、単年度での利益回収にとどまらず、お客さまとの取引全体を通じて得られる利益を意識しながら、新規集客に投資する必要があります。さらに、利益を最大化するためには、契約いただいたお客さまが当社のサービスに満足し、継続的かつ長期にわたって取引いただける関係性を構築することが不可欠です。
こうした取組みを効率的に循環させてくことが、収益力向上の鍵であると考えています。ローン・クレジットカード事業で培ったノウハウを提携先のリテールビジネスに提供することで、信用保証事業の収益性向上にもつなげてまいります。また、それぞれの事業で発生する経費について、予算を管理する経営企画部でしっかり経費コントロールをおこない、不要なコストの削減に努める必要もあると考えています。
株主還元の拡充
前中計においては、配当性向の目標を35%としていましたが、新中計では50%へと引き上げました。通期の配当額は、新中計の初年度で6円増配の20円とする方針です。資本政策の考え方の末尾に「堅持する」という表現を用いたのは、配当性向50%の達成を目指すなかで、仮に利益の変動が生じた場合でも、配当額20円の水準は確保するという強い意志を込めたものでございます。
繰り返しになりますが、配当性向50%の実現を目指しつつ、予期せぬ事象により利益が一時的に減少した場合でも、配当額20円を堅持する方針です。そのうえで、利益が安定的に成長していく状況においては、配当性向50%の水準を目指すことにより、さらなる配当額の増配も十分に可能であると考えています。
![[PC]資本政策の基本的な考え方・中期経営計画の目指す姿](/corp/ir/management/medium-term_management_plan/img/img-basic_capital_policy_pc.png?20250929)
![[SP]資本政策の基本的な考え方・中期経営計画の目指す姿](/corp/ir/management/medium-term_management_plan/img/img-basic_capital_policy_sp.png?20250929)
自己資本比率の適正化
2025年3月末時点における連結総資産に信⽤保証残⾼を加算して算出した⾃⼰資本⽐率は22.9%でした。 信用保証残高を加算する理由は当社の事業特性上、偶発債務として保証履行が発生するためです。こうしたリスクを踏まえ、経営管理の観点から、信用保証残高を加算して算出するほうが適切であると判断しています。
前中計において、自己資本比率の目標値を25%としていた理由は、外部格付機関との継続的なコミュニケーションを通じて、20%程度の水準が適当と評価を受けていることに加え、将来的な新規事業やM&Aによる投資、国際会計基準(IFRS)への対応などを見据え、一定の余裕を確保する必要があると判断したためです。
新中計では、余裕枠の見直しを行い、前回の目標値から2%引き下げた23%を新たな目標としています。安定的に利益を計上し続けることで自己資本は積み上がりますが、営業債権残高や信用保証残高が増加すれば、自己資本比率の分母も拡大することになります。そのため、一定の利益を着実に積み上げつつ、安定的・継続的な配当を実施し、現状の水準を維持しながら事業拡大を継続していきたいと考えています。
業容拡大と新規投資の推進
これらの資本政策を基盤としつつ、前中計から引き続き、GeNiEの業務提携先の拡大、新規保証提携先の拡大、さらには海外金融事業の強化を推進し、業容の拡大を図ってまいります。新中計における業容の目標は、2025年3月期比で1.2倍となる3.2兆円を掲げています。営業収益は、業容の順調な増加を見込み、3期連続の増収となる3,665億円、営業利益についても、3期連続の増益を見込み1,004億円を目標としています。
また、新中計においては、中期重点テーマとして新たな国への事業進出や新規事業創出への挑戦を掲げています。3ヶ年の間に、1か国以上への新規進出を視野に入れ、調査活動を進めてまいります。進出方法についてはM&Aも選択肢の一つとして検討を進めており、新たな国への展開および新規事業の創出に向けて投資をおこなっていく方針です。
適切な情報開示とサステナビリティ経営の高度化
近年、国内外において情報開示に関するガイドラインがたくさん示されていますが、当社はまだ十分に対応できていないと認識しています。情報開示の充実に向けて積極的に取り組み、情報の非対称性の解消に努めてまいります。情報開示は、株主、提携先、社員、そして入社を検討する学生など全てのステークホルダーから注目されている重要な事項です。当社が何を重視し、どのような取組みをおこなっていくのかを明確に開示することは、全てのステークホルダーとの円滑なコミュニケーションを図るうえで極めて重要なことであると考えています。
当社は、企業理念として「人間尊重の精神」を掲げており、この理念は社内に広く浸透しています。一方で、これまで人権方針を明示していませんでしたが、2025年6月に新たに人権方針を策定しました。また、これまで当社は子供や障がい者の方でも楽しめるバリアフリーコンサートの開催、献血活動、森林保全活動などの社会貢献活動に積極的に取り組んできました。しかしながら、これらの活動に関する情報発信や認知向上については、不足感を感じており、今まで以上に積極的に取り組む必要があると考えています。
近年、ニュースで報道されているように、金融詐欺による被害が多発しています。当社では、これらの被害を未然に防ぐための取組みもおこなっています。 具体的には、申込時の情報から被害の兆候を検知し、その情報をお客さまに直接ご連絡差し上げることで被害の防止に努めています。当社の企業理念には、「お客さま第一義」という言葉があります。お客さまにとって真に有益であるかどうかを常に意識しながら事業を推進することが当社における重要な軸だと考えています。サステナビリティ推進室だけでなく、全ての部署においてサステナビリティに取り組む必要があると感じています。今後も、情報開示やサステナビリティへの取組みの更なる高度化を目指してまいります。
中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)
当社グループは「全てのステークホルダーの期待に応えつづける」というビジョンの下、2026年3月期を初年度とする中期経営計画では「ビジョン達成に向け、成長サイクルのスピードを上げる」を中期方針に掲げています。成長サイクルのスピードを上げるために、18の中期重点テーマを一つひとつ着実に実現させるとともに、企業価値の向上に取り組んでまいります。
中期方針

全てのステークホルダーの期待に応えつづけるためには、社員一人ひとりの「成長」が必要です。その成長のためには、事業と人への「投資」が必要であり、その投資をするためには継続的な「利益」が必要となります。そして、その利益を上げ続けるために「お客さま・提携先」に満足していただかなければなりません。そのためには、アコムグループの「成長」が必要です。このサイクルを「成長サイクル」と呼んでいます。ステークホルダーの期待は常に高まり続けるので、その期待に応え続けるためには、この成長サイクルを回し続けることが必要であり、中期経営計画では成長サイクルのスピードを上げていきたいと考えています。
連結業容・業績目標
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- 営業債権残高
- 3兆2,796億円
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- 営業収益
- 3,665億円
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- 営業利益
- 1,004億円
連結営業債権残高


連結営業収益


連結営業利益


中期重点テーマ/事業戦略・機能戦略
戦略区分 | テーマ |
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事業戦略 |
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機能戦略 |
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